始めに年度末が近づいてきました。学校では卒業式の準備が進んでいるのではないでしょうか。また今年もコロナ禍と闘いながらの卒業式になりますね?
大変とは思いますが、皆さんのご健闘をお祈りします。これまで同様、児童生徒の思い出に残るものにしてあげてください。
さて、卒業式の時期は、人事異動の時期でもあります。そして管理職、特に校長の腕の見せ所でもあるのです。おいおい人事異動の手続きについてもお話しますね。
私は現在非常勤講師ですが、2年前まで小学校の校長をしていました。
今はアルバイトの身ですので、発言にほとんど制約がありません。ざっくばらんに、小学校の校長の仕事の本当のところや、校長になろうと思ったいきさつをお話しようと思います。
本音もいっぱいで出てきますので、最後までどうかよろしくお付き合いください。
小学校の校長になろうと思ったきっかけ
大学を出てもすぐには教員採用試験に合格できず、塾の講師や常勤講師をしていた私でしたが、2年後やっとのことで、実家から遠く離れた市の中学校の新規採用教員となりました。
前年まではアルバイトでしたが、正式採用になった私は1年目から学級担任であり、週24時間の理科授業を担当しました。
その学校の校長先生は理科の校長先生です。
後から触れますが、「所属職員を監督する」という仕事で、時折理科室に来て私の授業ぶりを見てくださいました。
私は新米教師で、右も左もわかりません。
当時の私は、「ヤブガラシ」という植物の授業をしているのに、地の利がわからないので実物を用意できず、生物の指導で一番大切な、直接手にとって学ばせることができずにいました。
つまり生徒たちに教科書の写真を見せて、おざなりの説明をしていたわけです。
校長先生はその様子を見て、「これはだめだ。」と思ったのでしょうが、授業後、私に一言も注意することもありませんでした。
そして次の日私が理科室に来てみると、教卓に「ヤブガラシ」がたくさん載っていたのです。
【 こういうやつです 】
超ご多用の身でありながら、ご自分で山に行き、私の指導材料を用意してくださったわけです。
もうびっくりでした。
初任の時に、私はこのような素晴らしい方に出会いました。
そしてこんなかっこいい校長先生になってみたいとも思いました。
私はこの人を、私の生涯のターゲットにしようと考え、将来可能ならば校長職をやってみようと考えたのです。
またこの学校には私のその後の人生に大きく影響を与える教頭先生もいました。そのことはまた別の機会にお話しようと思います
校長の仕事って法律ではどうなっている?4つの校務について
それでは本題に入ります。
管理職試験を受けようと思う人以外、あまり興味があることではないと思いますが、法律に定められている校長の仕事について説明しますね。
学校の教育活動は、【学校教育法】という法律に大筋が書かれています。
その中で校長の仕事は、「校務を司り、所属職員を監督する」とあります。
校務というのは、学校の教育に関する仕事すべてを意味します。そして司どるとは、すべて自分の責任において完遂するという意味です。
法律には、校長は教育全ての仕事を自分の責任の範囲内に置き、やり遂げる人であると書かれているのです。
言葉を変えて書きますと、校長が司どる校務とは次の4つだと言う人もいます。
- 教育課程の管理
- 施設の管理
- 人事の管理
- 事務の管理
校長は、教頭と連携した管理職として、このような仕事をしています。
所属職員を監督する仕事
あまり良い言葉ではありませんが、校長は「職員に対して①職務上の監督(公的部分の監督)と②身分上の監督(私的部分の監督)祝しなさい」ということになっています。
校内では、教師としての仕事を褒めて意欲付けしたりする仕事をする
校外では通勤の途中や私生活において、信用失墜行為がないように指導する
ということです。
教職員が県外旅行をするときに、私事旅行願いや届けを出してもらって、校長は誰がどこに行ったか把握しておきなさい、などと言う地方公共団体もありますね。
「学校では校長しか仕事ができない」って何があるの?
校長は校務すべてを自分の責任の範囲内において処理をします。
逆に言うと「責任があるのは校長だけ」とも取れます。
ですから「学校では校長しか責任がある仕事ができないのだ」という人もいます。
納得する部分もありますが、とてもではないですが校長一人で仕事をしたりすることはできません。
そこで日本の学校では、「校務分掌」と言って、校務をその学校の先生たちに分け持ってもらって、処理をしてもらい、責任は校長が取る、という仕事のやり方になっております。
ちょっと言い回しが複雑ですね。
校長職のやりがいや喜び、反対に「つらい」と感じることって?
いろいろな制約やしがらみがありますが、校長の仕事はものすごくやりがいがあります。
「教育は次世代の国造り」という言葉があります。
38年間公立の小中学校で教師を務めてきての一番の喜びは、教師がたくさんの人と生活し、泣き笑いをすること自体が、国造りになっていると感じられたことです。
また教師は有形無形で人に対して影響を与えることができ、ある人の人格形成に何か役だったと感じることがあることです。
そして校長は、ある程度自分のビジョンで、人格形成の方向を決めることができるのです。
考えようによっては怖いことでもありますが、次の時代に生きる人たちの思想の基礎やきっかけ造り、場の提示を行えます。
実現可能かは別として、ある程度、その筋書きを造ることができるのです。
これが一番、校長がやりがいを感じるところです。
さらに、休憩時間や昼休みなどは、次の時間のテストの採点など気にせず、子どもたちと話し、触れ合うこともできます。
これは嬉しかったですね。
私は時々、子供たちを校長室に招待していました。
教頭時代はむずかしいこと、苦しいことをいろいろと味わいましたが、校長をやってみて辛いと思う事はまったくありませんでした。
若い時からなりたいと思っていた職種だったからです。
忙しいと思うことはたくさんありましたが、「つらいからいやだ」と感じることはなかったのです。
小学校での私の1日の仕事とスケジュールについて
では続いて小学校の校長が1日にどのような動きをしているのか、過去のスケジュール表を見ながら紹介してみようと思います。
日によって違いはありましたが、出張や研究会、特別な会議がないときは、おおむ ね次のような動きをしていました。
学校長になっても分刻みで仕事がある
結構廊下でのんびり挨拶をしているようでも、校長職も他の先生方同様に分刻みで仕事があります。
- 7時15分・・出勤と生徒の声掛け
- 8:00分・・職員朝礼
- 9:00分・・隣接保育園でのあいさつ
- 10:00分・・運動場の見回り
- 10:30分・・授業の見回りと広報活動
- 12:00分・・給食の検食
- 13:00分・・校舎の見回り
- 13:30分・・校内清掃
- 13:45分・・外出して会議
- 16:00分・・職員会議・保護者対応・教育委員会の仕事
- 19:00分・・退庁
- 20:00分・・PTA役員会など
以下で詳しく解説していきます。
まずは朝に生徒に声掛けをする
(あまり早く行くと、職員のみなさんが気兼ねをします)
校門か近くの交差点で児童を迎えました。とびきり大きな声で「おはようございます、今日も元気か?」と聞くのが私の役目でした。
校長は学校の顔の部分もありますので、なるべく地域の方にあいさつするのが仕事です。
職員朝礼や集会でのあいさつ
火曜日と木曜日は職員朝礼をやりました。短く、モラールを高める言葉を伝えるのが校長の仕事です。「全校集会」でのあいさつもたまにあります。
ない時は起案文書の点検です。そしてその後は10時頃まで、提出文書に追いまくられていました。
9時00分隣接保育園での業務
併設された幼稚園長も兼務していたので、廊下でつながっている幼稚園に渡って、園児の様子と保育の様子を見ました。幼稚園は行事が信じられないくらいたくさんありま
す。それに参加したり保護者との対応をしたりするのが、園長の主たる仕事です。
運動場の見回りと安全指導
運動場か体育館へ行って、掃除をしながら、遊んでいる児童が危険なことをしていないかどうか見守りをしました。小学校には業間という時間があります。
その時間、若い教師たちは子供たちと一緒に遊びながら、安全指導をしていることが多いのです。
安全指導の仕事を校長が引き受け、先生たちには、授業の準備や各自の校務分掌処理をやって
もらっていました。
広報活動と記録づくり
各教室を回って、授業の様子を写真に撮りました。
学校では、毎日学校ブログを私が更新しました。
写真を撮りながら、私の初任の時の校長先生のように「何か先生方が困っていることはないか」ちらっと見て、自分なりに把握するようにしておりました。
困っているようなら、それを教頭職に伝えて対処してもらいます。
その後大急ぎでブログの更新です。
同じ町の校長たちや、昔からの友人である大阪市の大規模校校長と互いのブログを批評しながら、子供たちの記録を作っていきました。
給食の検食をし、安全確認
配送されてきた給食に異常がないかどうか確かめます。ほとんど確率はゼロに近いですが、もし何かおかしいことがあれば、すぐにストップをかけなければなりません。食べた後、検食日誌というものをつけます。
午後の校舎の見回り
今度はカメラを持って子供たちの様子を撮影しながら、遊んでいる児童が危険なことをしていないか見守りました。
時々キャッチボールやサッカーを一緒にやってほしいという子たちも現れ、時折背広を着てスポーツをしたりもしました。
校舎の清掃業務
掃除開始です。校長室だけでなく、校内をウロウロして、教頭職がやり残したところを掃除するのが、私の務めです。
生徒が廊下で異物を踏んでケガをしないように。階段で転ばないように・・・細かいところを最終確認していきます。
外出して地域サービスとの連携会議
コロナの前でしたので、あの頃は外出しての会議ばかりでした。ほとんど学校にいない週もありました。小学校の校長は沢山の役職を兼任します。
- 幼稚園長
- 町のすべての小中学校の代表
- 地域の学校生活協同組合の理事長
- 研修組織の長
- 町役場の文教厚生に関する委員
- 社会教育に関する委員
- 公民館運営委員
- 町幼児教育研究会の長
このような役職がオプションで付いています。
これに参加するだけでも、生きている充実感がありました。ただ私の留守中は、教頭職が十分学校を回してくれていました。
職員との打ち合わせや雑務処理
学校に戻って会議や職員の皆さんとの会話、保護者対応、教頭職との打ち合わせ、教育委員会から依頼された仕事の処理、校内研究会の参加、先生たちへの指導プリント
の作成等々をやっていました。数え上げたらきりがありません。
遅く退庁し、たまにPTAの仕事に参加
とんでもない校長ですね。職員のみなさんには、管理職が遅くまで残っていて、申し訳ないこと、勤務時間が終わったら可能な人はすぐに帰ってほしいことを
繰り返し話していました。この後、月に何回かは、PTAの役員会や地域の公民館運営委員会がありました。本当にブラックですね。
まとめ
私のいた小学校は地域の中心校なので、来客もものすごく多かったです。
保護者や業者だけでなく、町役場の皆さん、新聞社や放送局も時々きました。
来客ゼロの日は年間、数えるほどでした。校長は学校の顔なので、丁寧に応対して学校のことを説明し、学校への信頼感を得るのもウエイトの大きい仕事です。
また、中規模校や大規模校では、常勤講師が非常勤講師の人も多いです。
これから採用試験を受けて、正式採用になろうとしている人たちです。
講師の皆さんに、教員採用試験の勉強の仕方を教えたり、面接の練習をしたりしました。後進を育てていくのも大きな校長の仕事です。
もう一つ書きたかった1年間のスケジュールですが、記せばこれもかなりありますので、またの機会にしたいと思います。
可能ならばこれからも時々ブログを書かせていただきたいなと考えています。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
気軽にどうぞ♪