非常勤講師や常勤講師として契約すると「1年」「3年」「5年」と任期を指定されます。
初めての採用の場合、1年という学校が一般的です。
常勤講師の場合は、「3年」という契約もありますが、5年と指定してくる学校はほとんどありません。
それは5年を過ぎると「無期雇用」「専任登用」にしなければならない、という国が定めた法律があるからです。そのために、学校では試行錯誤をして、何とか5年以上にならないようにしています。
そこで、3年、5年任期の壁と対応策、非常勤講師採用時の学校の本音は、などについてご紹介しましょう。
ちょっと混乱するので分かりやすくまとめます。
- 非常勤講師・・塾のアルバイトのようなもの
- 常勤講師・・任期付きの派遣契約社員でボーナスや社会保障アリ
- 専任講師・・正社員で社会保障・ボーナスなどが手厚い
非常勤講師・常勤講師の契約時の注意点
教員で、専任採用になるとよほどの問題でもない限り定年まで続けることができます。
非常勤講師、常勤講師の場合、学校によって契約年数や契約の仕方は「マチマチ」で、ほとんどの学校は「常勤講師」でも専任になるのは難しいのが現状です。
契約時に「常勤を1年で専任にします」といっても、それは採用する時の口約束で、実際に2年目に専任になれるかも「怪しい」という言葉も良く耳にします。
それでは、非常勤講師と常勤講師の契約、契約更新についてのお話です。
非常勤講師・常勤講師はあくまで批正雇用
非常勤講師、常勤講師はいわゆる「非正規雇用」です。
企業等でもパート社員、派遣社員、契約社員と呼ばれる非正規雇用の労働者がいますが、学校という世界はとても独特で、一般企業とは少し契約等が違ってきます。
その一つは、夏休みや冬休みなどの長期休暇の存在です。
常勤講師の働き方は専任講師と同じ
常勤講師は専任と異なり「常に勤務してほしい講師」です。
常に勤務するということから私学共済に加入したり、ボーナスも約束されていますが、契約年数は1~5年以内でそのほとんどが契約後の更新はありません。
さらに、週休二日制の導入により、常勤講師の場合は、夏休みや冬休みはもちろん専任教師と同じように出勤日になります。
出勤時間も、8時から5時半というのが規定で、ほとんどの教員は、夜の7時、8時まで勤務しています。
部活や委員会、「生徒指導」「体育祭」など学校で決められた役割も割り振られ、登下校の指導や日直も回ってきます。
副担任にもつき、担任が急務の際は保護者とのやり取りなども任せられます。
さらに、夏休みは一般企業よりも少なく、全員に認められているのはお盆や暮れ正月だけ、部活が強い学校では、担当部の顧問になると、こういったお休みすらありません。
企業でいう「契約社員」のようなものですが、時間外労働に対する手当がないという学校も多く、非常勤講師よりもひどい扱いを受ける学校もあるということです。
非常勤講師は時給のパートやアルバイトと同じ
非常勤講師の場合は、時間給で働くパートのような存在です。
学校によっては、一般企業や流通業界のようにパート社員として社会保険の加入を認めていますが、埼玉県の私学のように多くの学校では社会保険に加入できないのが現実です。
その理由が夏休みなどの長期休暇です。
一週間の5日以上勤務しても「私学共済(社会保険)」に入れない
介護や育児休業がとれないなど、
福利厚生という面では最低と言っても良い仕事です。
今時、街中のスーパーや中小の工場や保育園、幼稚園でも、パートの人には手厚くある福利厚生がある時代。しかし、私学の教員は、学校次第では、最低の待遇で仕事をしています。
それでも安定して仕事がしたいという私学で働く先生たちは、必死に雇用契約の更新を確保しようとしています。
非常勤講師の契約は基本1年
非常勤講師の契約は基本「1年」です。
どの学校でも、1年以上での契約はないと言ってもいいくらいです。
しかし、どうしても学校では教員数を確保したいためにいろいろPRします。
「2年以降専任登用あり」
「常勤、または非常勤講師募集」
こんな募集形式をとっています。
実際に履歴書等を送り面接に行くと、募集時の内容と違うことが多々あります。
「はじめの1年は非常勤講師で翌年から」
「最初の1、2年は非常勤講師ですがいずれは専任になるチャンスも」
といったことを言われます。
しかし、こういったことを言われた後、本当に専任になることができる教員は一握りです。
まして、専任がある程度数確保できている学校の場合、芸術科、体育科、技術家庭などはほぼ「ない」と言ってもいいくらいです。
よほど運よく高齢の専任教諭がいて定年になる代わりに採用ということでもない限り、専任どころか常勤講師に上がる機会もありません。
非常勤講師ですら1年で契約更新なしということも珍しくないのです。
非常勤講師の契約更新は難しくない
1年契約ごとの非常勤講師でも、学校側は慣れた先生が良いのは確かです。
実は初めから1年で終わり、翌年の継続はないという例はあまり多くありません。
継続がない例はあまりないのですが・・・。
- 元々次の先生が決まるまでの「繋ぎ」として採用された
- 教員同士とのトラブルがあった
- 生徒とのトラブルがあった
- 専任の先生の育休代用の場合
このようなときは1年で契約終了です。
他の学校との兼任の場合は良いですが、1校だけに集中している場合、その後の所在をはっきりしなければなりません。
早めに継続がないことを告げてもらえばよいですが、ぎりぎりになってからでは、その後の仕事が決まらず焦ってしまいますね。
公立の非常勤講師は、勤務校で次の継続がない場合は、校長先生が次の学校を紹介したり、決めてくれることがほとんどです。
公立学校では、以前は採用試験での不合格者のほとんどが、「臨時採用」枠に登録をしていたため非常勤講師が不足すると、こういった名簿から連絡をすることがありました。
しかし、昨今の教員不足で公立でも非常勤講師が不足してしまい、教員確保のために徐々に雇用条件をあげています。
そのため、さらに私立の教員が不足する事態になっています。
こういった理由から、よほどのことがない限り更新がないということはありません。
非常勤も5年以上の継続は無期雇用扱いになるが注意が必要
非常勤講師は1年契約ですが、5年以上の継続更新がある場合「無期雇用」契約をすることができます。
非常勤講師の中で無期雇用になると、契約書に書かれている年齢まで契約時と同じ契約条件で非常勤講師を続けることができます。
無期雇用の契約内容は、学校によって違いますが、一般的には「時間数、またはコマ数」「時給」「無期雇用になる年齢の上限」が記されています。
年齢の上限は60歳がほとんどです。
時給はその時の契約が2,500円でも、その後就業年数によって2,800円、3,000円になると書かれている場合もあります。
こういった契約は、よく考えずで印鑑を押してしまいますが・・。
納得いかないものなら契約をしない、という手段もないわけではありません。
しかし、ほとんどの場合あまり「ごねて」しまうと、取り消しになってしまうこともあります。
そこで、他に「保険」がない場合はある程度で「妥協」をしましょう。
五年の無期雇用契約が守られないこともある
しかし、5年以上の更新があったからと言って、誰でも「無期雇用」になれるわけではありません。
中には、5年縛りの問題を逆手に取られてしまい、本来ならその後も継続というはずが、色々な条件を付けられて打ち切られてしまう人もいます。
さらに、無期雇用の契約をしないために、非常勤講師を採用する際に1年契約ではなく、初めから3年、5年と契約を決められて、「無期雇用はない」という契約を作られてしまう学校もあります。
酷い学校では、一度契約打ち切りになったのに、やはり教員が不足しているからという理由で1年後に再雇用になり「継続ではないから無期雇用にはできない」といったことになる人もいるということです。
つまり最後のギリギリ1年で雇用を切り、振り出しに戻すわけです。
非常勤講師が無期雇用になるメリット
元々「常勤講師にも専任にもなりたくない」という立場で仕事をしている教員もいます。
結婚し家庭を持っている女性教員です。
この場合は「子供の休みに合わせて休める」「子供が帰宅する時間には帰宅できる」という利点があるからです。
そして、良い先生ならそのまま5年後に無期雇用になります。
無期雇用になれば安定した同じ学校で同じ条件の元60歳まで仕事を続けられます。
一年ごとの契約ではないため、夏のボーナスが冬と同額になる、という利点もあります。
さらに、結婚し夫が安定した仕事、例えば公務員や専任の先生等の場合、無理をして常勤講師や専任にならない方が良い点もあります。
「家族を蔑ろにしたくない」「家庭も仕事も両立したい」と思う女性の先生はたくさんいます。
こういった立場の先生の場合は、あまり無理をせずに焦らず、非常勤講師の無期雇用を狙ってみましょう。
一般的な常勤講師の契約期間について
常勤講師の場合は契約社員と同じようなシステムになっていますが、ほとんどの学校は1~3年契約にしています。
これは、5年問題の関係で5年以上契約をしたくないためです。
常勤講師は私学共済等に加入してしまうため、非常勤講師以上に5年以上勤務すると専任にしなければならない条件がそろってしまいます。
そのため、常勤講師の場合、3年以内の契約にする学校が一番多いようです。
酷い学校の場合は、生徒の入学者数に応じて常勤講師の契約3年が終了したのち、同じ教員を非常勤講師として採用するといった学校もあります。
常勤、非常勤講師を繰り返して、同じ契約を5年以上にしないのが狙いのところが多いのでそれを知ったたうえで決断してください。
常勤講師の無期雇用転換について
常勤講師の無期雇用となると、イコール専任という流れになります。
現在5年目を過ぎた人は、翌年の契約を更新してもらえたなら、専任になれる確率はかなり高くなります。
学校側も「あなたを評価しているために、専任として残ってもらいたい」という意志があることの現れと考えられます。
ここで、もしも6年目も常勤講師でとなれば、それは法律的に間違っていることになってしまいます。
そのため、ほとんどの学校では3年契約を結んでいるのです。
とはいうものの、教員不足の現状をみると、本当に残ってほしいと考える先生なら、6年目は専任でという意識を持っているはずです。
常勤講師で採用された場合は契約年数に注意しよう!
初めから、若い先生を「常勤講師」として採用する学校が増えてきました。
しかし、この時に気を付けてほしいのが契約年数です。
「契約年数が1年で、その後専任登用があり」となっていたらその後につながる確率は低くなります。
採用の時はなんとか人材確保したさに「先生のように若い人は長く勤めてほしいから」「常勤講師は1年でその後は専任になります」等とリップサービスたっぷりのことを言われます。
常勤講師1年でその次の年から専任、というのは私学の採用時の「常套文句」のようです。
面接の時に良い雰囲気でも、経歴が良くても、実際に勤務をしてみなければわからないというのが「学校側の本音」であり、これは理にかなっています。
それを真に受け、二つ返事で請けてしまうと後悔してしまうことが良くあります。
実際に勤務してみたら想像以上に職場環境や待遇が厳しかった、採用時の予想と違っていた・・・。
でも専任になりたいので頑張る、と頑張りすぎて苦しくなってしまう人は大勢います。
しかし、その後複数年の契約更新があれば、専任への可能性は出てきます。
学校の教師を続けるなら1年間は頑張ったほうが良い
ただし、1年目で「自分には合わない」と思ったら他の学校を考えるのも一つの選択です。
一般企業と異なり、教員の場合は多くの学校を経験することが必ずしもデメリットになるとは限りません。
幾つかの学校経験していることが対応力として評価されることもあります。
とはいうものの「一つの学校に1年以上続けられていない」という経歴は採用側にも疑問を生みます。
これは一般企業と同じです。
どれほど自分が良い先生だと自認していても、契約年数内(採用一年以内)での次の就職活動はあまりお勧めしません。
人材確保で採用したけれど「この先生は前の学校を1年で辞めているから専任になっても続かないかもしれない」というあなたへのイメージを作ってしまいます。
無期雇用契約を結ぶためにどうすべき?
無期雇用の契約は、常勤講師よりも非常勤講師の方がなりやすいです。
非常勤講師の場合は時間で仕事をしているため、自分の都合で授業時間を組むこともできます。
そのため、専任と違って子供の習い事やPTA、自分の習い事を優先し時間を決められます。
大変だと思いますが、与えられたコマは1年通じてきちんとこなしましょう。
授業の穴を「空けない」というのは学校から見たら一番の信頼になります。
- 子供の病気
- 子供の学校の用事
- プライベートのイベント
- 学校関連の資格試験
自分の病気や体調不良以外でも、イベントごとは起きます。
- 普段から、突然のイベントにどう対応するのか?
- 急な子供の迎えの対応は誰に頼むのか?
- 行事の年間スケジュールはどうなっているのか?
かんがえたうえで行動しないと、学校との両立に悩みます。
特に非常勤講師の方は「塾講師+非常勤講師」をやっており、冬期講習や夏期講習・模試などのイベントが重なりがちです。
「どうしても空きがいないから!」と頼まれてしまうとどちらかを休まざるを得ないと思いますが・・無期雇用を目指すなら学校優先ですね。
もともと両立が不可能なバイトスケジュールを組むのは危険です。
日々、しっかりと安定した仕事をし、周囲の信頼を勝ち得ましょう。
学校における専門性を高めることも重要
また、自分にしかできないというものを作っておきましょう。
例えば、社会の「日本史の近代史」は自分以上に専門的なことを教えられる教員はいない、音楽の「合唱」は他の先生では無理、といったものです。
他にも、専任と同じように試験の作成や成績付け等、他の非常勤講師がやっていない仕事ができる等、続けてもらわないと学校が困るといった立ち位置を確保してみましょう。
すると、他の教員よりも無期雇用に近づいていきます。
無期雇用を断られてしまった場合の対応策
「採用時に3年契約で更新はない」と言われた場合は、仕事をしながら公立の採用試験を受けたり、教職関連の転職サイト登録をしておきましょう。
公立は、非常勤講師の他に、臨時採用があります。
臨時採用は、一つの学校が終わっても、比較的短期の間に次の学校が決まります。
また、何年か続けていると採用試験の時には、校長先生自ら「面接指導」をしてくれたり、校長推薦等もあります。
公立の教員になりたい場合は、公立の非常勤講師や臨時採用がおすすめです。
ただし、公立は色々な学校もあり、授業がしやすい学校もあれば、荒れた学校、また、特別支援学級等もあります。
結果的に公立が合わず、私立に戻る先生もいますが・・・。
公立の専任経験があると、私立の専任試験も受かりやすいようです。長い目でみて、いずれは専任教員になりたい、という人はこういった方法も一つです。
まとめ
一度学校に入ってしまうと非常に忙しく、考える余裕がありません。目の前をこなしているとあっという間に1年3年、5年が過ぎていきます。
- 本当に定年まで自分は働きたいのか?
- どんな働き方が理想なのか?
- 今の給料や待遇で万が一の時に対応できるのか?
きちんと考えて行動しましょう!
気軽にどうぞ♪