教員が年度途中で退職する、なんてことは本来なら「ありえない」ことです。
しかし、近年こういったことが増加し「学校側も年度途中で教員の急募をしている」ことがあります。
それでも、どうしても辞めたい時はどうするか?
ということについて退職する場合の手続きと、事前準備事項についてお話をしましょう。
専任でも学期途中に辞める人が後を絶たない
教員の場合、専任は担任のクラスを持ったり、部活の顧問になることがあります。
辞めるとなれば責任重大です。ところが、近年、こういった専任の教員でも年度途中、しかも夏休みや冬休みといった長期休みを挟むことなく、辞めてしまう人もいます。
その多くは「病気」です。
中には、病欠の立場のままでいいから、続けてほしいと言われることもあるようですが・・。
「それさえ難しい」と辞めてしまう人もいます。
無責任といえばそれまでですが、ほとんどの場合は精神的なダメージが原因の病が多く、学校側も無理強いができないのが現状です。
その点、「非常勤講師は自分の授業さえ何とかなれば辞めることができる」などとのんきなことを考えていませんか。
専任の場合は、病気なら「病気休暇」が出産なら「産前産後休業」「育児休業」、介護なら「介護休業」がとれます。
きちんと保障があってのお休みを取ることが可能です。
ところが、非常勤講師の場合病気で欠席している場合、退職ではなく解雇処分となってしまう学校が多くあります。
本来なら、労働者の権利なのに・・。ひどい話ですが本当です。
それでも「辞めたい」と自分が望んで辞めるならその後の保障がないのは自己責任になります。
後のことは、学校が考えることなので、あまり気に病まないことです。
問題は、病気や出産、介護を理由に辞めざるを得ない場合です。
こういった理由で辞めてしまうとその後の生活の保障がなく、また復帰する時に、同じ学校に戻れないということです。
それでは、色々な事例をあげて、途中で退職をする場合のことをお話しましょう。
学校を途中で辞める前に注意しておくべきこと
非常勤講師の場合、途中で辞めると何の保障もありません。というか、年度替わりに辞めても保障がない学校がほとんどですが。
しかし、途中で辞めるということの中には、自分の意志ではないこともあります。
そこで、退職の手続きよりも先に「辞めた後、辞める時のご自身のこと」についてお話をしましょう。
正規雇用の話が来たら途中退職も止む無し!!
非常勤講師をやっていたけれど、正社員の仕事の話が来たら、あなたはどうしますか?
非常勤講師は非正規です。
当然、正社員の、しかも自分がやってみたいと思っていた職場なら行きたいですね。それは人間として当たり前のことです。
そして、ここで迷わないでください。
無責任と思うかもしれませんが、学校側が「非正規」としてあなたを雇用したことにも、問題があるのです。
非正規は、雇用する側の都合で採用したり解雇しやすいという身分です。
しかし、それは同時に、辞める側にとっても同じことが言えます。正規の仕事の方を優先すべきです。
非常勤講師はあくまでも「間に合わせ」の存在ですから、堂々と辞めても文句を言われる筋合いはありません。
もちろん、学校は年度途中であなたがいなくなったら、生徒も保護者もとても困ります。
授業の穴を埋める人材を確保しなければなりません。
しかし、そこまで重宝しているなら、あなたを専任にするはずです。
もっと保障のある立場にしてもおかしくないのです。
「それを、辞められたら困る」というのは学校側の言い分で、「保障のしっかりとした仕事に就きたい」と思うのは当たり前のことなのです。
さらに、学校側が非常勤講師に対して、社会保険や私学共済の加入を認めていないなら、堂々と辞めて大丈夫です。
そして、新しい職場で頑張ってください。
ただし、その仕事が本当に合っているかどうかはやってみなければわかりません。
転職者を受け入れる職場は、急募となっていても、数か月の猶予がある場合がほとんどです。
別の学校に転職するなら引継ぎを考えるべき
そこで、もしあなたが、今の学校と遺恨を残したくないなら、筋だけは通しておきましょう。冬休み中の出来事なら年度替わりまで、夏休み中ならせめて後任が決まるまで、新しい職場に待ってもらうというのも一つの考え方です。
どうせなら、学校側にも恩を売って辞めたほうが得策です。後々「新しい職場は合わない」「学校の先生の方が良かった」とあなたが思った時に、学校側が求めていたら、再雇用ということがあるかもしれません。
別の職種に行くのであれば、そこは問題がないです。学校に戻りたいという意思があるのであれば気を付けてください。
職場のストレスで病気で問題になったなら悩まない!
教員という仕事はブラックです。中でも、非常勤講師はブラック中のブラックです。それでも、専任教員になれることを夢みて頑張っている人もいます。
ところが、そんなことは学校も生徒も理解していません。
慣れてしまえば「こんなものか」と割り切れることも、始めたばかりのころは違和感ばかりで、精神的なストレスも並大抵のものではないでしょう。
そのため、非常勤講師の中には仕事のストレスから精神的な病気になってしまう人もいます。
中には、「先生を辞めさせる」ことに快感を感じている、それを自慢するという問題のある生徒もいるくらいです。
若い女性の先生の中には、男子生徒から暴力を受けたり、性的な嫌がらせをされてしまうこともあります。
学校はこういった問題を周囲に知られたくないために、隠してしまいます。
さらにマスコミに至っては、いじめや暴力で学校や先生を非難しても、こういった生徒のことを知らなさ過ぎて本当に笑ってしまいます。
先生の中には、生徒からの被害に苦しんでいる人も大勢います。
もちろん、専任教員なら「病休」扱いにして、しばらく休んで様子を見ることもあります。
しかし、非常勤講師がこういった理由で辞めるのは、事実上「自己都合退職」です。一般企業なら「労災」認定されるような案件でもです。
こういった理由で辞める場合は、突然なので非常勤講師の先生には何ら責任はありません。
医者からドクターストップを受けた、という先生もいるくらいです。むしろ、何の保障もしない学校に訴訟をおこしてもおかしくありません。
そんな学校は見切りをつけて、退職をしましょう。
もちろん、後任のことなど気にせず、事務的なことも家族に任せて、全てを忘れて新しい人生を考えましょう。
産休・育休・介護休暇が取れず辞める場合
非常勤講師の場合、こういった労働基準法で認められているお休みを、取得できる学校とできない学校があります。本来は、「すべての働く人の権利」のため、取得できて当たり前です。
もし、休みを取れたとしても、専任なら受けることができる給与保障が受けられない、ということもあります。
そのため、非常勤講師の場合、妊娠から出産となると、年度の区切りの良いところで「お疲れ様」と、退職が当たり前のように言われてしまいます。
周囲の先生が辞められたら困るから、といっても、学校のトップはその間に他の教員に来てもらったほうが良い、と事務的に解雇の宣告をします。
妊娠出産は、自分でコントロール可能なので、それは自己責任も伴います。
突然の介護で学期途中に辞める先生も多い
しかし、困るのは介護です。
少子化が進む今、親の介護をすることになったら、あなたはどうしますか?
正社員は「介護休業法」によって、一定の期間の休業補償があります。ところが、非常勤講師には介護休暇がないのです。
突然親が倒れた、入院した、介護が必要になったという時、あなたは学校を辞めざるを得なくなるのです。
さらに、介護をしている人を新たに雇う職場は限られてしまうため生活苦になってしまう可能性があります。
結婚して、一定の収入を得ている配偶者がいれば何とかなることも、独身者の場合は、全てを失ってしまう可能性もあるのです。
さらに、介護はいつまで続くのか予測がつかないため、復帰もわかりません。
労働基準法で決められた「育児介護休業法」は、入社1年以上の労働者全てに93日間の介護休業を認めています。
この間、「親を預かってくれる施設を探したり、訪問介護や通所介護の手続きをする」といった休業期間になります。
認められていないのは日雇いの場合だけで、非常勤講師も対象です。
ところが、非常勤講師の中には年度替わりに契約を新しくするため、二年以上勤務していても、一年以上の雇用と認めていない学校があります。
こういった学校が、非常勤講師の介護休業に関する保障がないのです。
非常勤講師の場合は、こういった事例のことを考えて、日ごろから自分で準備をしておくということしか解決策がない、というのが現状です。
突然の親の病気と介護は本当に大変です。普段から学校に行かずとも稼げるスキルを身につけておいた方が良いと心底思います。
学期途中で学校を退職する時の事務処理について
仕事を辞める時、または雇止めをするときは、辞める3か月前に申告することという暗黙の決まりのようなものがあります。
しかし、ほとんどの場合はこれに即していません。
- 次年度学校で専任が決まった
- 親の介護が厳なり施設が決まった。
- 5月に結婚、出産が決まった
と、このようにすっきりと遺恨なく辞められる場合は、自分の直属の上司、または採用担当者に話をするとある程度の事務処理は必要ありません。
問題は、上の事例のような途中退職です。
失業保険・共済脱退・離職証明を得る
退職を決めたら、直属の上司、例えば教科主任かあるいは教頭先生、採用担当の先生に話をします。
そして、事務的なことは学校側の雇用によって2つに分かれます。
非常勤講師に私学共済や社会保険への加入を認めている場合、非常勤講師でも健康保険や年金などを学校を通して行っていることになっています。
そこで、まずは私学共済や社会保険などの脱退の手続きを行います。
さらに、長年勤務していれば失業保険の対象にもなるため、こういった手続きの書類を受け取ることになります。
この手続きに必要なものが「離職証明」です。必ず受け取っておきましょう。
ただし、自己都合の場合失業保険が出ない場合もありますので注意しましょう。
また、私学共済は退職後も一定期間の加入が認められています。
退職後は、全額自己負担になりますが、こういったことも説明を受け、新しい仕事が決まっていればそちらで加入するまでのつなぎの手続きをします。
決まっていなければ、続けるのか、それとも国民年金などに加入するのかを決めて、手続きを行います。
これは、結婚・出産で夫の扶養に入る場合も同じです。
非常勤講師にこういった保険制度の加入を認めていない学校の場合は、自分で国民年金、国民健康保険に加入しているため、あまり事務的な手続きはありません。
新しい仕事をしない場合は無職になります。配偶者がいる場合は、収入がなくなるため配偶者の扶養に入ることになります。
そこで、必ず「離職証明書」を受け取っておきましょう。
離職証明は必ず取る
どんな辞め方でも、その後の手続きでも必要になるのが「離職証明」です。まず、扶養に入る場合は必ず必要です。夫の職場、親の職場に仕事を辞めて保険などの扶養に入る手続きをします。
しかし、夫以外の扶養の場合、年金制度に関しては扶養に入ることはできません。親の扶養に戻れるのは健康保険だけです。
さらに失業保険が出る場合、仕事を辞めてしまう時に、もう一つ選択することがあります。
失業保険を受け取る場合、配偶者や親の扶養に入ることはできません。
失業保険はあくまでも「仕事をしたいのだけれど、辞めざるを得ない状態になってしまった。新しい仕事を探してほしい。」という意志のある人に出る保険です。
そのため、仕事を探すまでの「繋ぎ」として出るのが失業保険です。
そこで、離職証明を受け取ったら、失業保険を受け取るほうが良いのか?配偶者や親の扶養に入った方が良いのかを決めてください。
さらに、今まで勤めていた学校でコマ数が多く、月20万円以上受け取っていた人は、新しい学校でのコマ数が少なく、10万円に届かないこともあります。
この場合、失業保険との差額も支払われますので、申請してみてはいかがでしょうか。
学期途中でやめた場合の後任について
退職の理由が、結婚や出産の場合「事前に後任を決めてほしい」と言われることがあります。
例えば「大学の後輩であなたの後任になることができる教員免許を持つ人はいないか」といったことです。
もし、こういう人がいるなら、紹介するということもあります。
さらに、こういったことが理由の退職は学校側も嫌な顔をしながらも、「仕方ない」と思ってくれます。
そこで、後任の先生が決まったら、事前に打ち合わせをし、新しい先生が困らないように準備をしてあげることも大切です。こういった気配りは、後々あなた自身の株をあげることにもなります。
もし、新しい先生が数年で辞めてしまいあなたが復帰できるなら、再雇用ということになるかもしません。
ただし、学校が原因の病気や、親の介護はあなたの責任ではありません。
事前にわかることでもないので、そこは「仕方ない」と目をつぶっておきましょう。
問題は、他の仕事に移るという場合です。
この場合は、あまり年度途中での退職について、学校側が良い顔をしないことは確かです。
あまり「事前準備を」等というと「どの口が言う」と思われてしまいます。
同じ科目を持つ先生にとっては、後任が決まるまであなたの穴を埋めることになります。辞めていなくなるのだから、余計なことはしなくていい、むしろ今辞めろ、と思っているかもしれませんね。
退職後の後任がいない場合は話が長引くので注意!
以前は、途中で非常勤講師が辞めても、あまり困ることはありませんでした。しかし近年の教員不足は深刻で、途中の退職は、あなたよりも学校の方が困ることが多くなっています。
多くの学校で後任が決まらず、困っているという話を耳にします。中には、事前に専任の先生の産休と育休がわかっていたのに、育休が始まっても決まらないという学校もあるくらいです。
本当にひどい学校なら「ざまあみろ」と言いたいところでしょう。
しかし、後任が決まらないというのは、あなたにとっても引き継ぎができず不安感が残ります。
そのためになかなか退職手続きが取れない、事務処理が遅れるなどというトラブルが起こります。
特に私立学校は気を付けてください。
できるだけ遺恨を残さない、退職の仕方を選びましょう。
気軽にどうぞ♪