セミリタイアという言葉をご存じですか?
50代、60代から始める人が増えている「適度に働いて、残りの時間は好きなことをして過ごす」という生活です。
完全にリタイア(隠居)するには早いけれど、でもガツガツ働くのはもうやめよう、という世代ですね。
今回は非常勤講師のセミリタイアについて現実問題も含めて解説しようと思います。
非常勤講師のセミリタイアの計画
高齢者の多くは、55歳くらいから60歳くらいまでの間に定年退職をし、65歳まで天下り先や同じ職場で「嘱託」という仕事をし、その後年金暮らしになっています。
戦前生まれの多くは、1000万円以上の退職金と、現役の7割の年金保証があるため、65歳を過ぎればリタイアをしてもなんとか生活ができました。
退職金による貯金の他に、毎月手取り20万円前後の年金を受け取ることができますので、リタイアしても極端な贅沢をしなければ、夫婦二人の生活には十分です。
今でも公立の先生や公務員、私学の専任教員は同じくらいの保証を受けることができます。
以前、国が老後のために「1人3000万円を用意すると良い」ということを言っていましたが、退職金をしっかりと受け取れる「正社員」や「正規職員」は改めて準備をすることなく、残りの日々は年金で生活できるということです。
では実際に計画的にセミリタイアするためにどんなケースがあるのか?考えてみたいと思います。
女性非常勤講師のセミリタイア
女性の非常勤講師は、二つのタイプがあります。
大学院などに残って研究をする傍らや公立の教員採用試験を受けながら非常勤講師をする人と、兼業主婦の人です。
兼業主婦の人の中には「扶養」にこだわって週に8コマ以内に抑える人もいます。
しかし、ほとんどの非常勤講師は15から20コマを持っています。
配偶者の扶養の範囲内に入れないため「健康保険、年金、税金」を自分で支払っています。子育てや家事と仕事を両立することを目的としているため、子育て中に貯金をすることは難しいです。
しかし、子育てが終わると貯金をしたり、自分の時間を持つことができるのが兼業主婦の非常勤講師です。こういった人の場合は子育てが終わったころから、セミリタイアの状態になります。
子供が大学を卒業し、家のローンを支払い終わる50代後半~60代に入ると、残りは自分のお小遣い程度の授業を持ち、時間を趣味に充てたり、貯金をすることもできます。
元々、自分の収入で子供の塾代、学費、お小遣いにしていた分が自分自身で利用する余裕ができるため、非常勤講師の中で一番多い働き方です。
こういったタイプの人は、現役の時からいつセミリタイアしても大丈夫なように、準備をしている人も多くいます。
独身の女性非常勤講師の多くは、大学院などで研究を続けている人が多く、そのまま予備校の専任講師や大学の専任講師、教授などを目指すため、いずれは「専任職員」として仕事をする人です。
専任の大学職員となれば、安定した収入と退職金、年金が保証されています。
優秀な大学の教員になれば、65歳を過ぎても客員教授などになり、その後も安定したセミリタイア生活が保証されます。
男性非常勤講師のセミリタイア
男性非常勤講師の多くは、専任教員を目指したり予備校講師を兼任しています。いずれはどこかのタイミングで「専任」になることを目標にしていますが、30代までに専任採用がないと、かなり厳しくなります。
女性と違い、結婚で扶養されるという可能性が低いため、自力で安定した生活を確保することが大切です。
そのため、男性の多くは若いうちに専任教員となり、逆に定年後のセミリタイアでまた「非常勤講師」に戻るという人が多くいます。
中には、60歳までずっと専任、一般企業のサラリーマンだった人が60歳を過ぎてから「非常勤講師」として、セミリタイア生活を楽しむ人もいます。
退職金もあり、企業年金も受け取れるうえに、お小遣い稼ぎに非常勤講師をしているため、余裕のある生活をしています。
しかし、中には現役の時にずっと予備校や非常勤講師を掛け持ちし、そのまま60歳、65歳になってしまう男性もいます。
自営業よりも災害などに左右されないだけ良い、と言われます。
しかし、年齢を重ねても続けられる自営業と違い、60歳、65歳を過ぎると継続がない、ということがありますので準備をしておくことが必要です。
セミリタイアできない非常勤も多い
非常勤講師といっても、人によって抱えている事情は様々です。必ず全員が早めにリタイアして悠々自適に過ごせるわけではありません。
勤務先の学校によっても、条件が異なり、あまり悲観していない人もいますがほとんどの非常勤講師は老後の蓄えに不安を抱えています。
共通するのは、専任教員と異なりしっかりとした退職金がもらえない可能性が高いこと、厚生年金の支払いがない可能性が高いことです。
また、非常勤講師そのものが専任よりも「部活や行事など」拘束時間が少ないため、すでにセミリタイアのようなものなので、現状とあまり違いがないことです。
それでも、40代、50代のころのようにバリバリと毎日授業をすることが難しい、となった時にどれくらいの蓄えがあればよいのでしょうか?
まずは、60代になったことを考えて、準備をしましょう。
非常勤は定年前に求人登録が重要
専任教員はもちろん、非常勤講師でも60歳定年制を決めている学校はたくさんあります。
しかし、教員不足のため「その後も継続をしてほしい」と声をかけられることもあり、給与が減額になりながらも続けている非常勤講師がたくさんいます。
一方、高齢の先生は難しいと、60歳定年で継続なしという学校もあります。
この時に困ってしまうのが、65歳までの国民年金の受け取り額は「月1万円前後」であることです。
満額受け取れるのは65歳からになるため、何とかして残りの5年間を受け入れてくれる仕事を探すことになります。
非常勤講師の場合は、ほとんどが新しい学校を探して再就職する形をとるようです。とはいうものの、さすがに60歳を過ぎると非常勤講師といえど、新しい先生を受け入れる学校はあまりありません。
そこで、あらかじめ貯金をしておく、60歳を過ぎても紹介のある「求人サイト」に登録をしておく、といった準備が必要です。
急に焦ると良い結果は出ません。早めに退職に備えておきましょう。
学校によっては、本当に人手不足で60歳どころか70歳を過ぎた先生を採用している学校もあります。
「教員としての仕事をする」という条件以外はあまり問わない、ということなら他の学校へ行って、わずかでも収入を得て65歳まで続ける、ということを勧めます。
まずは貯金を優先させて計画を練る
非常勤講師の年金は、一円も支払わない「専業主婦」と同じ金額です。満額で一か月手取り6万円弱と言われています。6万円で生活できますか?
持ち家の場合ならそれでも可能かもしれません。
女性で結婚をし、配偶者が正社員、正職員なら「夫の扶養に入る」ことで生活することができます。しかし、独身、妻も自営や非正規雇用の場合は、独身なら6万円、二人合わせても12万円になります。
非常勤の年金は生活保護の支給額よりも少なくなります。
それなら、生活保護を受ければよいのでは、と思いますか?
生活保護を受けると、車も家も財産を持つことはできず、今まで通りの生活が難しくなります。
保護を受けるには色々な審査があるため、絶対に利用できるとは限りません。
そこで、年金生活に入るぎりぎりまで非常勤講師を続けて、少しでも「貯金」をする、という準備をしましょう。
また、70歳ギリギリまで仕事ができる学校を選ぶ、という選択をしている先生もいます。
それでも仕事がない場合は、教員の仕事ではない人手不足の業界で仕事をする、という心の準備も大切です。
年金では生活ができない分、元気なうちは「仕事」をして収入を得るのが非常勤講師は避けられない、という覚悟をしましょう。
非常勤講師は貯蓄を増やす方法とは?
それでは、現役の時にどれくらい貯金ができるのでしょうか。
老後3000万円を用意するためには、30年間で年に100万円を貯金する必要があります。
非常勤講師の年収ではどれくらい貯金が可能なのでしょう?
年間100万円も貯金することは可能なのでしょうか?と聞かれたらはっきり言って「無理」です。他に収入があるならともかく、非常勤講師だけの収入は専任教員の1/2~1/4です。
時間給が2800円の先生の場合、週18コマの授業を受け持っても201,600円になります。
税金や健康保険、年金を支払うと残りは16万円前後です。非常勤講師の場合はローンを組むことができないため、家を持つことは難しくなります。
賃貸のアパートやマンションを借りると、安い地域でも家賃だけで5~8万円、そのほかに様々な生活費を支払うと、頑張っても数万円余るか余らないかです。
毎月2万円ずつ貯金しても、一年で24万円になります。30年間貯金しても720万円です。
そこで、副業を持っている先生が多く、それでも普通に生活するのが精一杯というのが現状です。それでも少しでも貯金をしたいという人のために、貯金の秘訣を5つご紹介します。
- 独身の場合は実家から通う(家賃や食費をできるだけ節約する)
- 副業をする(部活や会議・行事・研修などがない分、空いた時間は他の仕事をする)
- 現状よりも良い条件の学校からの誘いがない限り、できるだけ同じ学校で頑張る(経験で時給がアップするため)
- 早めに投資型の貯金をする(50歳を超えるとNISAはお得感がなくなるため40代までに)
- 安定した仕事を持つ異性と結婚をする?
こういった条件をクリアしても、ボーナスがない、社会保険に入れないなど様々な理由で年間20~30万円の貯金ができれば良いほうです。
しかも、家庭を持っていると子供の入学金や結婚資金などで出費があると、自分のことどころではありません。そこで、他を我慢してもできるだけ「貯金」だけはこだわるようにしましょう。
女性の非常勤講師の場合は、結婚しているから続けられるという人がほとんどです。この場合は年金も夫の安定した年金が可能なため、早めにセミリタイアすることができます。
まとめ
退職金が期待できない、あまり貯金ができない非常勤講師の場合は、60歳を過ぎても完全リタイアすることは難しいです。まず65歳まで頑張って現役を続けその間に貯金をし、65歳から徐々にセミリタイア生活に移行していきましょう。
通信など、週に一日という授業でも、元気でいる限りは続けていきましょう。
これは、非常勤講師だけでなく他の業界でも言われていることです。
また、こういった年齢になった時「教員」以外の仕事をしたことがないでは、仕事をお願いする側も難しくなります。
現役の時に副業を持つなら、予備校講師や家庭教師だけでなく、まったく別の業界での仕事を受けたり、資格を取っておくと良いかもしれません。
人生80年、残りの20年間収入が足りない、ということがないよう色々な準備をしておきましょう。
気軽にどうぞ♪