薬剤師になりたくて薬学部に進学する。薬剤師や医師は教師以上に「その仕事に就きたい」と目指す人が行く学部です。
それでは、薬剤師になったら他の仕事ができないのか?
教師にはなれないのか?
その逆もアリかという転職のお話です。(ちなみに筆者の子供は薬学部)
結論を先にお話すると、一般的な薬剤師が取れる6年生薬学部では、4年生の薬学部が取れる教員免許は取れません。
これは管理栄養士が家庭科の免許を取れないことと同じです。
つまり、薬剤師になるなら6年、教員になるなら4年の薬学部を卒業することになり事実上はほぼ不可能です。
薬学部で取得できる教員免許という勘違いについて
色々なサイトで「薬学部で理科の免許が取れる」という言葉があります。
たしかに、文部科学省のHPでも理科の教員免許が取れる大学一覧に、薬科大学や薬学部が入っています。
それでは、本当に薬学部で理科の免許を修得することは可能なのでしょうか?
薬学部で本当に教員免許が取れるの?
文部科学省のHPは間違っていませんが、一覧の「見方」を間違って解釈していることがあります。
それは「薬剤師を目指す薬学部」で「理科の免許」も取れるという勘違いです。
つまり「薬剤師」のための大学に進学した人が薬剤師の免許も取って、尚且つ「理科の教員免許」も取れるという間違いになります。
理科の免許が取れるという薬学部に以下のようなものがあります
- 城西大学のように「薬学科(6年制)」or「薬科学科(4年制)」
- 横浜薬科大学のように薬科学科で「6年制」or「4年制」の2学部耐性
- 東京薬科大学や明治薬科大学・・「薬学部」「薬学科」(「生命科学部」「生命創薬科学科」)とor「4年制の薬学や生命を研究する学部や学科」
この違いを理解している人もいます。
しかし、文部科学省の「教員免許が取れる大学一覧」では、「薬学部」と一括りにされているため、「薬学部で理科の教員が取れる」=「薬剤師が理科の教員になれる」と勘違いしてしまう表記になっています。
これは別々の学部と考えた方が分かりやすいです。
例外的に薬学部で教員免許が取れるケース
ただし、次のような事例なら不可能ではありません。
「4年制薬学科で理科の教員免許を取得したあと、どうしても薬剤師になりたいために、6年制に転学・転科し薬剤師の免許を取る」という方法なら両方の免許を修得することも可能です。
実際に「家庭科の教員が医師になった」という事例もあります。
しかし根本的に「6年制」と「4年制」では、入学する時の基準は6年制の方が上です。
4年制から6年制に転学・転科するだけでも大変なのに、教員免許を取る余裕などほぼありません。
修得する単位も不足するので、留年覚悟で臨むくらいです。
薬剤師という資格は、初めから6年制薬学部に入学できても、国家試験が受けられる6年に残るということそのものが至難の業なのですから・・・。
むしろ6年制に入ったものの、国家試験合格へのレベルに残るのが難しいから4年制に転学し、理科の免許を取るということの方が現実的です。
この場合は「薬学部を出て理科の教員になる」ということになり、「薬剤師が理科の教員になる」ではありませんね。
そこで、初めの結論になりますが「薬剤の免許を取りつつ」が「教員の免許も取って」に転職することは、ほぼ不可能です。
薬剤師が教師の仕事に就くのはかなり難しい
薬剤師が教師の仕事をするというのは、かなり難しい選択です。
それでも、薬剤師を辞めて教師になりたい、と思う人はよほどの人ではないでしょうか?
「薬剤師」になれれば安泰というイメージがあります。
就職する時に製薬会社や調剤薬局、大学病院などに就職ができます。
ところが、薬学部卒業後の就職も狭き門で、6年制を卒業しても研究職扱いで製薬会社に勤めるのは難しいようです。
平成に入って4年制から6年制が落ち着いたころから、薬剤師の免許を持つ人の数は、必要数を大きく上回り、飽和状態になりました。
労働厚生省:平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況より
そのため、医薬分業になり、病院とは違う場所で薬をもらう、調剤薬局という形になります。
それでも薬剤師が余る傾向で、令和の現在、調剤薬局でも新人が就職できるのは、かなり難しいということです。
そして、薬学部でも研究職を目指す人はさらに3年、博士課程まで進学をしています。そこまで勉強しても、なかなかなれないのが「薬」の研究者です。
薬剤師から教師に転職したい人はどうすべきか?
薬剤師の試験に合格した6年制大学卒のほとんどは「調剤薬局」で仕事をしています。
大手製薬会社に入社できた、と喜んでも修士卒では営業の仕事や事務方に回されてしまい、やりたかったことではないと辞める人もいるようです。
近年はサプリメントブームで、化粧品会社や自然食品会社に就職して「研究職」に就く人もいるようですが、修士卒はほぼ調剤薬局と考えて良いようです。
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薬剤師から大学の教職員へなら転職が可能
「調剤薬局での仕事は自分がやりたかったことではない」製薬会社の営業は自分が目指した仕事ではない、と他への転職を考えた時に、教師という仕事はあるのでしょうか?
調剤よりも、誰かに何かを教えることの方が、自分には向いているのではないか、そう思う時に参考にしてください。
薬剤師の免許を持っている人が、薬学部での経験を生かして「教師」の仕事をするには次用のような方法があります。
まず、大学の教職員は教員免許が不要です。
そのため、大学の教師なら薬剤師でもなることができます。
同様に医療系の専門学校や食物系の大学など、教員免許がなくても教師としての仕事をすることができます。
また、医療系の大学を目指す高校生たちが通う、予備校や学習塾の教師という道もあります。
臨時採用枠で薬剤師から教師に転職する
学校の仕事はブラック、教師になりたくない、という若い人が増えています。一方、一般企業で働いていた人や他の仕事をしていた人が、教師になる人もいます。
それでは、薬剤師は教師になれないのでしょうか。というと、免許を取ることができないため、そのままでは教師にはなれません。
しかし、学校によって不足している教師の穴埋めに「臨時任用」という制度を使っている学校があります。
臨時採用の場合は、正規の教員免許がなくても、県が発行する臨時免許で教師の仕事ができます。
もちろん、スムーズに正規の教師として採用されるとは限りません。非常勤講師や常勤講師のスタートになるかもしれません。しかし、臨時免許で仕事をしている間に、通信などで不足単位を修得し、教員免許を修得すれば正規の教師になれる可能性があります。
まとめ
薬剤師の免許を持っているけれど、他人に何かを教えることが好き、学校で仕事がしたい、学校の教師として仕事がしたい人にとって、こういった方法があります。
もちろん、時間がかかるかもしれません。遠回りになる道です。若い皆さんにはすぐに結論の出ない、長い道になるかもしれません。
それでも、薬剤師の仕事ではない仕事に就きたい、教師に転職したい人にまったく道がないわけではありません。もし自分が教師になりたい、という人は教師になるための道を探してみましょう。
気軽にどうぞ♪